『俺の空〜蒼き正義魂〜』のホール導入を記念して、
ロデオ社員、ロデミとパンサーが、原作者の本宮ひろ志先生に直撃インタビュー!
予想をはるかに超えるスケールの本宮節を是非堪能して下さい!

■プロフィール
漫画家
本宮ひろ志先生

昭和22年(1947年)生まれ 千葉県出身。
中学校を卒業後、パイロットの夢を抱いて熊谷少年航空自衛隊に入隊するが、昭和39年、漫画家になるために除隊。昭和40年、日の丸文庫から『遠い島影』でデビューする。昭和42年「日本の子供」に『松ぼっくりの詩』を連載。同年「週刊少年ジャンプ」に読み切り作を発表した後、昭和43年に、出世作『男一匹ガキ大将』を連載開始。TVアニメ化、劇場映画化される。昭和48年「プレイボーイ」に『春雷』を発表し、青年誌に進出する。昭和50年、同誌に『俺の空』を連載。大人気を呼び、昭和52年劇場映画化もされる。昭和54年「ビックコミック」に『男樹』を連載。昭和55年4月、新聞紙上で突然の休筆宣言を行い、物議をかもす。昭和56年「プレイボーイ」に自伝的な作品『春爛漫』を連載し、再び作家活動に入る。昭和63年、「コミックモーニング」に『雲にのる』、平成2年に『大と大』・『猛き黄金の国』、平成6年に『サラリーマン金太郎』を連載。どの作品にも一貫して、強烈な個性と生き様を持った男たちが描かれている。政治、経済、暴力団、学校、宗教など取り上げる題材は様々だが、簡潔でかつダイナミックな語り口で、人間や社会の本質を鋭く突く。
2010年12月現在、週刊ヤングジャンプにて『新・サラリーマン金太郎』・ビジネスジャンプにて『猛き黄金の国〜柳生宗矩』を連載中。


ロデミ


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パンサー


ロデオ男子社員。
同じくブログロデオ
活躍中!
引きが弱い(らしい)
■パチスロ化のご感想は?
パンサー:
まず、今回の『俺の空〜蒼き正義魂』を含めて、先生の作品がパチスロやドラマなど別のメディアになったことは数多くありますが、ご自身としてはどんなお気持ちなんですか?

本宮先生:
それはねぇ、自分の手を離れたら客観的にみるだけですね。ただ本音を言うと、俺の漫画を上回る物は一つもないかなと(笑)俺の漫画は表面的にはわかりやすいんですよ。暴力的なところとか。ドラマ化してもそんな感じになるんだけど、本当はもっと気が弱くてね、もっといろんなバランス感覚があるって自分の中では思っているんだけどね。

ただ、唯一、負けた!と思ったのは宝塚だね。あれはびっくらこいたな(笑)岩崎弥太郎の話だったんだけど、俺のより全然面白い(笑)パチスロはパチスロとして全く別のものとしてみてますね。
■金があって、女にモテて、頭が良くてどこが悪い!
ロデミ:
今までロデオからは『サラリーマン金太郎』、『俺の空』、『天地を喰らう』など本宮先生の作品を多くパチスロ化させて頂きまして、ロデオといえば本宮先生というイメージもあるかと思います。是非いろんなお話をお聞きできればと思いますが、そもそも、『俺の空』について、描かれたキッカケはございますか?

本宮先生:
当時の青春モノというのは、なんか知らないけど貧乏臭くて、押し入れに一ヶ月分のパンツ貯めていたみたいな、そんなんばっか描かれていたんだよね。ところが、金があって、女にモテて、頭が良くて、それで青春だっていってどこが悪いか!って描いたのが『俺の空』(笑) そしたらどっかの編集者に「こういうもの描いたらヒットするの当たり前だ」っていわれたんだけど、だったらお前が描いたらどうだって話でしょ。コロンブスの卵みたいなもんでね。その頃は、子どもの漫画やってて、初めて大人の漫画を正式にやるっていったときで、そこで自由に描けるものってやっぱり、エロじゃないですか。それがメインのウリでしょ。

やっぱり最初のラブシーンの時は気合い入れて描きましたよ(笑) それまでのね、エロ漫画っていうのは、ロマンポルノみたいな女優がでてきてやるわけなんだけど、『俺の空』の場合、それをアイドルみたいな女の子をバカバカ脱がしてっていうシーンを作る訳じゃないですか。当時、ウチの奥さんが女の漫画を描いていたんで、こっちは構図だけを描いて、女のキャラクターを奥さんに描かせてたんですよ。それは本当に嫌がりましたよ(笑) ただ、いいから金だと思って割り切って描けっていったんですけどね(笑)
■安田一平はなぜ刑事に?
パンサー:
今回のパチスロは『俺の空 刑事編』を原作としていますが、主人公の安田一平を刑事にした理由はありますか?

本宮先生:
あの当時、筒井康隆さんが「富豪刑事」を出されてて、 だから、それでいいやって(笑)なんだかんだで、みんなどっか、パクリか何だよね(笑)

ロデミ:
ええ−、それは掲載して大丈夫ですか(笑)

本宮先生:
いいですよ、いいですよ(笑)まあ、パクリといってもイメージだけですけどね。あとは熱中時代で刑事編とかあったんで、その辺からイメージしてますね。刑事編のときは、現役の刑事に現場の様子を教えてくれって頼んだこともあって、原作の1巻にもあるんだけど、女の子の死体がプールに浮かんでいてってときの様子を書いてもらったことがありますね。通報があって、パトカーのやりとりがあって、それから死体を上げたときの実地検証のやり方なんかがあってって、詳しく聞いたら、それは圧倒的にリアルになるじゃないですか。その当時、「管理官」とか「チャカ」とか専門用語なんか漫画では、ほとんどでてなかったんじゃないかな。そういった刺激もあった方が面白いでしょ。

ロデミ:
面白いですね。ところで、用語と関係するかはわからないんですが、先生の作品で同じ名字の登場人物が多いみたいですが、なにかこだわりがあるんですか?

本宮先生:
名前については…、深く考えていない(笑)確かにそうですよね(笑)安田一平とか矢島金太郎なんか主人公については語呂合わせとか考えてたんだけど、まあよく考えると時代劇みたいな名前が多いよねこれは俺の趣味問題なんだけど…ダブること多々あります。えー、すみません、深く考えてません(笑)
■すべては俺都合!本宮式仕事術を紹介!
本宮先生:
仕事のやり方ってことでいえば、他の漫画家さんなんかだと、締め切り前に4,5日机の前で悶々と考えている人も多いみたいだけど、俺の場合、その時間が無駄なんで直前まで遊んでいるわけ。それで、24時間の中で一番つまらない時間を見つけて仕事するの。何かの待ち時間だとか、雨でなんにもできないときとかに。そういう時間にバァーッとやると、自分にとっての黄金の時間が広がるわけ。とにかく、締め切りっていうのは、相手の都合じゃないですか。相手の都合で仕事するのは効率が悪いんですよ。だから俺の都合でしかしないというやり方。だから一遍にバンバンやっちゃう場合もあるし、ギリギリになる場合もあるけどね(笑)まあ、俺は絶対サラリーマンできないよな(笑)

ロデミ:
男性は女性に比べてスケジュールを立てない傾向があるらしいですね。

本宮先生:
でしょうね。ただ、唯一、世のすべての男性が反省すべきだと思うのは、家で待ってる女の人。あれは待たしちゃだめですね。ちゃんと約束を守るか、用事を伝えるかしないといけませんね。ずっと待ったら辛いですから。もう、男は当たり前のように鈍感ですから。

ロデミ:
ここは是非、強調してほしいところですね。

本宮先生:
本当にせがれが同じことやっているのをみると切ないんだよね(笑)

ロデミ:
(笑)
■金太郎の美鈴はこうして生まれた!?
ロデミ:
女性と言えば、先生の漫画の女性は過去の作品であっても現代にも通じる魅力的な女性にみえますが、時代の先を読んだ人物像を常に考えていらっしゃるんですか?

本宮先生:
うーん、女性観については昔から変わってないんだけどね。ただ、ハッキリ言って俺、女なんか描けないんだよね。絵としての話だけど。だいたい女をうまく描ける今の漫画家なんてみんな変態でしょ(笑)俺の場合、ウチの奥さんがたまたま女の漫画描いていたから、もう女は奥さんに描いてもらったんですよ。ただ、色々問題があって、ある時期、奥さんが描いてくれなくなっちゃったことがあってね。そのおかげで金太郎は最初、女が出てこないんですよ。しょうがないから、他の人に女を描かせてみたんですけど、なぜかはわからないけど、金太郎がその女の方に向かっていかないんですよ。で、どうしても描けなかったとき、その女をオカマに変えたらうまくいったんだけど(笑)それくらい本当にダメだった。しょうがないから奥さんにごめんなさい!って謝って、金だと思って割り切ってくれ!って描いて貰ったの(笑)

それで、銀座のクラブのママで主人公より7〜8歳年上で、とにかく色気があって…って注文をして、できたのが金太郎の美鈴なんだけど。これが俺の想像を超えるいい女なわけ。それでやっぱり漫画に描いてみると金太郎もそっちの方にいくのね(笑)それで奥さんにきいたら「ただ鉛筆で描くだけじゃないんだよ、この女の脳みそまで描くの!」っていってて。スゲエ!とか思って。いや、おれがスゲエって思うのも何なんだろうって思うけど(笑)
■続けられたのは漫画の才能がなかったおかげ
本宮先生:
そういうこと考えると逆に俺が自分で女の絵を描いていたら、35年前につぶれてたね。基本的に俺、漫画家の才能がないんだよね。同じ絵を二回描くとしても、両方とも二時間かかったりして、そのときは本当に漫画家やめようかと思った(笑)だから顔だけ描いて後は他の人に描いてもらったりして、それでようやく続けられたかな。ただ、そのおかげで俺より絵のうまい人を使ってやってきたわけだから、漫画家を続けられた最大の理由は、漫画家の才能がなかったからだと思いますよ。まあ、一番得意なところは、あることないこと話を考えることは向いているんですよね。そこに集中してこれたのがよかったかな。
■ホームランをかっとばす漫画とは?
パンサー:
それもある意味天才ですね。才能以外に、先生にとってヒットする作品の条件とはなんですか?

本宮先生:
結果論になるんだけど、漫画の場合、絵で表現するんだから、1番に大事なのは絵なんだけど、絵なんて言うのは読みやすくて人に好かれる絵だったら、上手下手はたいして関係ないんだよね。

2番に大事なのは何をウリにするかということ。『俺の空』の場合は、単純な話、エロですよ。エロで金もらってなにが悪いと(笑) ただ、エロを描くにもやり方があって、普通、漫画って主観が描けないんですよ。ようするに頭の中が描けない。小説だとブスッと刺されたときに、「熱い焼け火箸が突き通ってきた感じ」とか書くでしょ。そうするとその人間の感情が書けるんだけど、漫画は描けないじゃないですか。ブスッと刺した絵しか描けない。それをエロ小説読んでると女性が男性を受け入れた瞬間とかを文字で書くじゃない?上品な言い方してるけど(笑) いやらしい小説読んでるときはそういう所で興奮しているわけじゃない(笑) だから俺も2本立てでいったの、つまり絵を描いた上にナレーションで主観を描いていったの。そうしたら凄まじくスケベになってね(笑) 結局、編集部がそのナレーション全部取りやがったんだよね。「ちょっと、きつすぎる」って(笑) なにせ当時、俺の親父が仕事場で書いている原稿集めて読みだしたんだけど、「おい、これ、俺でも興奮するぞ!」っていったくらい。そんとき、絶対売れると思ったね(笑)

3番目は実際のストーリー展開を考えること。それは一番難しいんだけど、そういったものが、3つ揃って初めてこちらが出す価値のある商品になるんだなあと思うんです。で、4番目には、時代の風があるんですけど、それにのって4つ揃った時はホームランの可能性がありますよね。例えば「硬派銀次郎」の時なんか、うちの子供が幼稚園児かなんかだったんだけど、冷蔵庫開けて「アイスクリーム食べていいか?」って聞いてきたから、「自分で決めろよ」っていったら泣き出しちゃって、自分で決めろっていうと子供は困っちゃうわけですよ。そのときピーンときたんですけど、子供の夢っていうのは野球選手やサッカー選手っていうそんなキレイ事じゃなくて、「自立」だと思ったんだよね。だから中学生で新聞配達してて、誰からも文句いわれる筋合いがないっていう主人公が硬派銀治郎だったんですよ。それはある種こっちの予想以上の当り方したケースですよね。

金太郎なんかは、そこのウリが明確にないから、これは単行本100巻書き続けられたらランニングホームランかなというレベルなんだよ。ホームランって本当に地響きみたいにすごいからね。時代の風ってことで、『俺の空』の現象でいうと、その当時、『俺の空』が中学生の女の子が読むエロ本になってたらしいんだよね。教室かなんかで回し読みするような。それはこっちの計算外じゃないですか。女の子が読めるエロ本というのは、まさに新しい市場じゃない(笑)そういう意味でいくと、あの当時は雨が降って来るみたいに印税が入ってきたんだけどね。まあ、その金どこいっちゃったかわかんないけど(笑)
■ファンの皆さんにむけて
パンサー:
最後にですが、ファンの皆様に向けて一言お願いします!

本宮先生:
うーん、読者はいるんだけど、ファンというのは俺はゼロだと思うんですよね。面白い物描かないとどうにもならないですから、その辺はわきまえないと。ただ、『俺の空』は今、漫画としてないわけだから、もしそういう方がいるなら、まったく新しい『俺の空』を描く日もありますのでその時はよろしくお願いします。

ロデミ:
おおーっ!すごいお言葉を頂きました。本日は本当にありがとうございました。


<終わり>